100種類以上の野菜を作る 家庭菜園

出来るだけ固定種の野菜を作り、自家採種しています。

指導力は、目に見えるものだ。

ある時、元気な高校の指導者が訪ねてきた。
私が、小さな中学校に勤めていた時だった。
有名な国立大を卒業し、高跳びの選手としてもー流だった。
選手の勧誘にきたのである。



『いい選手がいたら紹介して欲しいので、宜しくお願いします。』と、その熱心な指導者は言った。



ひねくれ者の私は答えた。
『いい選手はたくさんいる。でも指導力のある指導者にお願いしたい。私にあなたの指導力を目に見える形で、見せて欲しい。』と言った。
彼は、『分かりました。』とー言答えて帰った。



それから、次に彼が訪ねてきたのは秋だった。
『先生、ご無沙汰しました。大したことでは有りませんが、実は今度の県駅伝大会に、男女とも地区予選を突破して、出場出来ることとなりました。その報告に来ました。』と。



私は『それは凄いことだ。驚いた、これからは全面的に協力しましょう』と興奮して伝えた。



彼は『先生、県大会に出られるというだけで、何の実績でもありません。』と笑いながら話した。



彼にとっては、県で上位に入賞したり、次の関東大会に出場するような実績を上げなければ、私の課題に応えたことには成らないと思ったのかも知れない。



無いものから有るものを生み出すことは不可能なことである。
彼は、それを成し遂げたのである。



彼の高校の陸上部には、長距離選手はー人も居なかった。それどころか、陸上部員すら数名しか居なかった。しかも、雨が降ると生徒数が半分ぐらいになってしまう生徒指導困難校と言われた問題ある学校だった。



私は瞬時に、彼の苦労と努力を想像した。
誰かれなく生徒と目を合わせれば、友だちのように親しみをこめて、陸上競技の面白さを語り、長距離はジョギングと同じダイエット効果があるとか、詐欺師のように騙して、部員を集めたのだろう。



私は転勤で学校が変わり、担任になった時は決まって毎朝のホームルームで、陸上部勧誘C M時間を作った。そして3分間スピーチをした。
とにかく、面白い話を1つして、先ずは子供を笑わせ、楽しくさせる。そして目と目があった時は、その子に、ほめ殺しの技を使う。
『君はいい目をしているね。君と同じ目をした女の子を、全国大会に連れていったことがある。』
『ウソでしょう?』
『ウソじゃないよ。頭が良かったからマネージャーで推薦したんだよ。』
てな具合だ。



私には、女、子供を騙す才能があった。
今のカミさんも私の話術で騙された筈だ。



彼もきっとあの手この手と、頼み込んだり、おだてたり、誉めちぎったりしたのだろう。



それこそが彼の指導力だ。
何の魅力もない高校に、人は集まらない。
彼がどんなに競技歴があっても、生徒にとっては、何の価値もない。



たいしたことのない自分に声をかけてくれ、いいとこ見つけて誉めてくれる。
自分のこと大事にしてくれそうな気がする。
そうして、選手を集めたのだろう。



彼は、きっと優れた指導者に違いないと確信した瞬間だった。




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